2014年9月16日

「祝祭日のテーマ」

俺はマルボーロに火をつけて食べた。
駅前の寿司屋から女が叫びながら出て来て
パトカーのサイレン、狂騒が
からからに乾からびてぱりぱり
剥がれ落ちていった。
コカ・コーラの自販機
の隣にコンドームの自販機
の隣にポップコーンの自販機
が置いてあって俺は、ますます
マルボーロに火をつけて
ますますマルボーロに火を
マルボーロ、火をますます、マルボーロ、につけて
食べる、火をマルボーロに食べる火を、つけてマルボーロ。
風呂屋でルー・リードが歌っていたんだ。
歯を磨きながらそれを聴いていたんだ。
あしたもう間に合わないから俺は
歯を磨きながらルー・リードについて考えていたんだ。
誰かがどんどん透明になっていく中で
洗われて黄色い桶、死なないで欲しかったんだろう、と
くぐった暖簾は灰色にたなびいていて、どうして
こんな月の晩に人が死ぬんだ。
無関係だったろう、その闇の中心で。
無感情だったろう、その闇の中心で。
早く拾い集めろよ、月から落っこちてくるゴミ屑、おまえが早く
拾い集めろよ、月から落っこちてくる、おまえが、ゴミ屑を早く
マルボーロを食って死ねよ。





「グレープフルーツ」

泣かないようにしたい。
焦げたカラメル色のまだらな鞄を持ってわたし、
想像しないようにしたい。
ゆっくり音楽が鳴っていた。
嗄れ声の男が、夢を見るときだけは無垢なのだと歌っているのが
きこえた。
ピアノの伴奏に合わせて体中の想像が
踊りだす。どこにも行かないんだってね、
きいたよ。
あなたは服を脱いだ。わたし、
それを見なかった。